火おこしのための秘伝書(ひでんしょ)

figure1  (ひだり)の図(図1)のような火おこしを使って火をおこす場合、やみくもにコマを回してもケムリだけ出て火をおこすことができません。
 コマの(じく)の先をよく観察(かんさつ)するとみぎの図(図2)のように、こげていることに気付きます。(使う前はノコギリで切り落としたままでした)
 このことは火おこしという道具が火をおこすきっかけをあたえる道具であることをしめします。
figure2
 ここで、火をおこすために必要ひつようなものをあらためて整理せいりしておきましょう。
 1. もえるもの(紙をもやす場合の紙にあたります)
 2. もやすためのもの(ふつう空気と考えますが正確せいかくには酸素さんそといいます)
 3. きっかけ(ライターやマッチ、火おこしの場合、ねつがその役目やくめをします)
(必要なのは、この3つだけでしょうか? ほかに必要なものはありませんか?)
 ふたたび火おこしのことを考えてみてください。上の三つがどこにあるでしょう? また、どれか一つでも欠けていればおぎなうためにはどうすればよいでしょう?
 先ほどの観察からわかったことは、軸のこげている部分に火をおこすための3.きっかけが集中しゅうちゅうしているということです。ここに1.もえるものと2.もやすためのものを近づけなければなりません。
 たとえば、もえるものとして「おがくず」のようなもえやすく、空気とふれている場所の多いものを使ってみてはどうでしょう? また、おがくずを3.きっかけにふれさせるためには、軸をけるもの(木のいたあな)もくふうしなければならないでしょう。
figure12
 火おこしを使ってケムリが出れば、火をおこすための3.きっかけを手に入れたことになり、ライターやマッチのかわりになることがわかったわけですから、その意味いみでこの実験じっけん成功せいこうでしょう。また、現在使われている(あるいはみなさんの知っている)火をおこすための方法には、1. 2. 3.のものがどこにどのようにありますか? (ひょっとすると欠けているものがあるかもしれません)
 さて、火おこしを使っておがくずがくすぶり始めたら、種火たねび完成かんせいです。種火は火の種ですので炎をあげるようにそだてなければなりません。
 一番かんたんなのは新聞紙しんぶんしを使う方法です。新聞紙で種火をつつみ息をふきかけます。この場合、新聞紙は1.もえるもの、息は2.もやすためのものとなり、種火が3.きっかけということになります。 figure20
 新聞紙は息がふきかけやすいようにおわん形にまるめておくといいかもしれません。種火をうつす場合はやけどなどのけがに注意しておこなってください。
 さらに新聞紙を使って炎をあげることができたら新聞紙などの紙が貴重きちょうでもやすことのためらわれたむかしを考えてみてください。紙も発明されていないような昔から私たちのご先祖様せんぞさまは火を使い、さまざまなことに使っていました。
 つけたせば、(図1)のような火おこしは、「意外に新しいものではないだろうか?」と考えている人たちもいます。このような火おこしのない場合どのように火をおこしたのでしょう? 火のおきる原理げんりを考えて想像そうぞうしてみましょう。
 逆に、(図1)のような火おこしは、どのようにしてできたのでしょう? 現在私たちの身の回りにあるものから、このような火おこしを作ることを考えてみてください。火おこしと身の回りのあるものとの共通のご先祖がみつかるかもしれません。
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昔から「火」はうやまわれてきました。
このことは「火」が便利(べんり)なものであることと同時に(おそ)ろしいものでもあるからです。くれぐれも火のあつかいには十分(じゅうぶん)に気をつけてください。
火は、みなさんのまわりの大切なもの(文化財もその1つです)を一瞬(いっしゅん)にしてなくしてしまいます。
火を使う実験(じっけん)は大人の人と安全な場所でおこないましょう。



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