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2011年03月27日

2題

京都国立博物館
法然-生涯と美術-
 親鸞の展覧会は多く存在するが、法然展は貴重。この展覧会というか、御年忌に併せて、多くの法然本、番組、企画が連動している。と言いつつ、ちょっとガッツリ法然を学びたいと思ったら『法然の哀しみ』をオススメしたい。
 当たり前と言えば当たり前のチョイスなのだが、法然を伝記、著作、周辺の人々から立体的に立ち顕している。梅原日本学というと膨大な資料を駆使した大胆な作業仮説という印象が強いかもしれないが、『法然の哀しみ』においては、法然の発心としての〈哀しみ〉に着目する以外は非常に慎重に膨大な資料を操作されている。梅原日本学のターニングポイントにもなっている作品だと思う。
 話がだだそれなのだが。
『法然上人絵伝』を手がかりに法然の生涯を映し出し年齢に応じたカタチでトピックスを立てている。
 顕密的に言うと〈生身の仏〉になるのだろうが、阿弥陀如来像の胎内に、さまざまな納入品を収める造仏の方法の多くの作品が取り上げられていた。阿弥陀との結縁という意味合いになるのか? 1点目の注目はココ。
 もう1点は「七箇条制誡」だろう。期間限定なので公式で展示期間を要確認なのだが、法然と親鸞(綽空?)をつなぐ貴重な資料を全文見れるのは貴重。(と、やや真宗よりなのだが)
 明治以降の研究史を考えると浄土宗は浄土宗、浄土真宗は浄土真宗と宗派ごとの研究が多くを占めている。もっと立体的に「一枚起請文」は浄土真宗にとっても重要な心構えだし、逆に『御文・御文章』は浄土宗にも貴重なのでは?
 いわば、三河の真宗教団のように法然も親鸞も大事という姿勢は、今後、注目されるスタンスなのではないだろうか?
 あ! そうそう、図録、買ったら、岡本太郎のポスター附いてた。なんか、ラッキー!


京都市美術館
親鸞展 生涯とゆかりの名宝
 親鸞展は、数多くあれど、どうしても三河や三重でやると三河と専修寺の資料ばかりになり、京都でやるとお西かお東のものばかりになるのを、非常にバランスよく貴重な資料、展開として重要なものを要点よくまとめてある。
http://www.shinranten.jp/
 こっちの親鸞展がビジュアル的・感覚的に親鸞の生涯を展示しているのに対して、京都市美の展示は一級資料を駆使して生涯を提示している。
 とくに注目すべき1点をあげれば『小経』『観経』の親鸞自筆注釈。あの細やかな書き込みの跡は一方で選択とか専修と呼ばれる浄土教系の諸宗にも、ちゃとした教義的研鑽が必要である事を示してくれる。

京都国立博物館
特別展覧会
法然上人800回忌
法然-生涯と美術-
20110326~0508

京都市美術館
親鸞展
20110317~0529

『法然展』 監修:京都国立博物館 企画・制作:NHK/NHKプロモーション/京都新聞社/アートアンドパート 音声ガイド作品リスト附 解説件数:18件 解説時間:約30分 ナレーション:竹下景子氏
*解説件数が少ない事で聞く側に余裕がある。
*展示のストーリーと作品の意味が聞くだけで理解できるという音声ガイドとしては当たり前の事だが、その点で練られていて、音声ガイドを借りる事により展覧会が十二分に楽しめる。
『親鸞展』 ガイド作成・音響演出:A&Dオーディオガイド 音声ガイド作品リスト附 所要時間:約30分 スペシャルゲスト・ナビゲーター:三國連太郎氏 作品解説ナレーター:藤村紀子氏
*なんか音声ガイドがパッカーン! となった感じ。
*作品1点1点に対する解説は基本的な事柄を汎用的に応用可能な内容にとどめて、展示のストーリーの提示に多くの時間を割いている。
*これまでの図録やキャプションの音声化とは一線を画するのではないか?
*まあ、こういうストーリー重視の音声ガイドには向き不向きがあるから、逆に作品のイコノロジーを駆使する音声ガイドも可能なわけで今後に期待できる内容。
*法然展同様に音声ガイドを借りると展覧会が十二分に楽しめる。

2011年03月07日

2人展

岐阜県美術館
伊藤慶二「こころの尺度」・林武史「石の舞・土の宴」
 音声ガイドが無料と言うことで興味を持って出かけてみた。
 観覧料が800円ということで安いのか高いのか? 3~5百円、音声ガイドにバックされているとすれば借りなきゃ損になるのか?
 美術館のかけもちで時間的に借りれないこともあるだろうし、音声ガイド独特の雰囲気が苦手な人もいるだろうし、無料にして見かけ上、観覧料に上乗せしてしまうのは、これからの博物館と音声ガイドの関わりとして実験的だな。
 観覧者と音声ガイドを借りる人の割合のデータの蓄積はあるのだろうから、そのデータを補正しながら積極的に活用していくのも1つの手だわな。
 内容については現代美術なので差し控えよう。

岐阜県美術館
伊藤慶二・林武史二人展
20110222~0508

2011年03月05日

5題

豊田市美術館
柴田是真-伝統から想像へ-
『美の巨人たち』で特集された巡回展とは別の内容。ミュージアムショップで巡回展の図録も販売されているので、少し予算に余裕を持っていきたい。
 江戸末~明治の漆工芸家。「だまし漆工」と呼ばれる漆工芸でありながら、陶器や板の木目などをリアルに表現した作品群。
 ライティングや照明、作品保護の観点から作品は必ずしも見やすいわけではないが、そのような雰囲気もふくめて、作品の質感や技巧の精が際立っているようにも思われる。青海波塗りは、本当に繊細。
 巡回展が見れなかったことが悔やまれる。
豊田市美術館
Art in an Office-印象派・近代日本画から現代絵画まで-
 新収蔵品展になるのか? 豊田市制60周年記念で、館蔵品の優品展もかねている。
 どれがどうでというと不公平になるかもしれないが、上村松園の「つれづれ」は、それだけを目当てにしても十分なくらい。松園好きは必見、是真も一緒に見れるので、結構なお得感だと思う。
 現代作品、とくに最近の作家も展示されている。目に付いたのは蜷川実花氏。中央にだけ焦点をあわせて、まわりをぼかす、その色使い、まさに実花調。
 印刷技術も進歩しているのだろうが、額装の仕方も新たな技術・方法が工夫されていて、その見本市としても興味深く見れる。
知立市歴史民俗資料館
新収蔵品展
 知立駅で思い立って知立市歴史民俗資料館へ。図書館と併設のこぢんまりした展示室だが、東海道の池鯉鮒宿のビジターセンター、知立市の考古・歴史・民俗資料を、ちゃんと大づかみに出来る。
 新収蔵品は、ひな人形、ミシン、時計、戦時資料と、これまた、こぢんまり。
 近世の街道に興味のある向きは、一度は見ておきたい展示。
名古屋ボストン美術館(金山)
響きあう うつわ-出光美術館日本陶磁コレクション
 iPod音声ガイド有り。
 黄瀬戸、織部、志野から、はじまり鍋島まで。中世・織豊期から近世への陶磁器の概観。
 乾山のような有名作家の作品もあるし、古九谷などでも見応えのある陶磁器が、ずらりと並んでいる。まあ4階フロアだけなので制約はあるが、その時期の焼き物を大づかみにして、なおかつ鑑賞にも十分堪えうる欲張りな展示と言ってもいい。
 音声ガイドは、たいてい30分程度なので、鑑賞に要する時間の目安にもなる。人間の集中力の限界が30分~1時間、1時間を超えると数分程度休憩したくなる。音声ガイドの時間と、実際に博物館を鑑賞したい時間を考える。1時間なら聞いていない時間が半分あってもいい。30分で見たければ、音声ガイドはフル回転。
 音声ガイドの説明は、およそ前半と後半からなる。前半は展示のストーリーにあわせた説明、後半はその展示物の個別の説明であることが多い。逆に言えば、前半部分は、その作品の前で聞かなくてもいい。何がある、どうなっているの説明になってから、その作品の前に行けばいいのだ。
 いいか悪いかは別として、僕は音声ガイドはキャプションの代読として聞いている。と言いつつ、ガイドにない気になる展示物はキャプションを見る。しかし、キャプションも全て読む必要はない。目録に大まかな情報、図録には、ほぼキャプションの内容が全て書いてある。
 気になる作品の、気になる項目だけを見ればいい。作品の年代であったり、絹本・紙本のちがい、油彩かどうかは作品をじっくり見た方がいい。
 と、展示内容と関係のない話を、さらっと書いてしまった。
松坂屋美術館(矢場町・南館7階)
松坂屋創業400周年・松坂屋美術館開館20周年記念
松坂屋コレクション-技を極め、美を装う-
 松坂屋の来歴、時代ごとの着物、年齢儀礼に関する衣装、武家の装いとして(たしなみとしての衣装・婚礼調度、陣衣装、能)と大まかに章分け(章名は私に改めた)されているのか?
 見所は、やはり時代ごとの着物の展示、たしなみとしての衣装・婚礼調度であろう。
 松坂屋における、ファッションとモードの研究の粋が、そこにあると言ってもいいのだろうか?
 徳川美術館が大きくバックアップして行われた展示のようだが、これくらいのことは松坂屋自体の学芸力で出来るようにしておかないと、宝の持ち腐れではないだろうか? それは、これからの売れ筋、商戦と、全くパラレルな出来事ではないのだと思う。

豊田市美術館
常設特別展
柴田是真-伝統から想像へ-
20110219~0403

豊田市美術館
企画展
Art in an Office
-印象派・近代日本画から現代絵画まで-
20110108~0327

知立市歴史民俗資料館
企画展
新収蔵品展
2011.0219~0403

名古屋ボストン美術館(金山)
響きあう うつわ-出光美術館日本陶磁コレクション
20110226~0327

松坂屋美術館(矢場町・南館7階)
松坂屋創業400周年・松坂屋美術館開館20周年記念
松坂屋コレクション-技を極め、美を装う-
2011.0305~0410

『響きあう うつわ』 名古屋ボストン美術館 展示作品リスト(兼展示目録)附 21件解説 iPod端末有り
*作品1点1点の解説というより、カテゴリーとしての黄瀬戸、尾形乾山、古九谷、鍋島などの全体的解説がメイン。
*iPodは左手の親指と中指で挟むようにして、人差し指で操作するとストレスが少ない。
『伊藤慶二 林武史』 カセットミュージアム 作品目録の裏側が音声ガイド&作品マップ 27件解説 音声ガイドは無料
*現代の作家なので作者の言葉が多く収録されているのは現代美術の音声ガイドの強み。
*伝えるべき事、伝えたいことが多いのは解るが鑑賞時間との齟齬が激しい。逆に、それも強みなのか? じっくりと作品に向き合える。