3題
個人的にはルネサンスから無敵艦隊の敗北までは西洋においても〈近世〉という概念で考えていいのでは? と思う。つまりフェルメールやレンブラントは国芳や写楽と比較しても似たような結果を得られるのではないか?
1番、大きいのは美術の庶民への浸透。「夜警」は役者絵よりは蒹葭堂の肖像画に近いのかもしれないが。も1つは自然科学の浸透。「地理学者」がいて大航海時代というものが立ち現れるのと同じように伊能忠敬が日本地図をつくる。
案外、ルネサンスから無敵艦隊までを〈近世〉と考えるのは西洋史家には一般的なのかもしれないが。
豊田市美術館
フェルメール
《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展
オランダの〈近世〉絵画の総説として、よく体系化されている。「地理学者」がなくても見る価値のある作品群。
神話画、肖像画、風景画、海、静物画。その画題から施主の顔も立ち現れてくる。
「地理学者」は、もう圧巻。でも壁の所にアルファベットが振ってあって、作者名でもなさそうだし整理番号? あれが意外に1番のナゾ。
名古屋市美術館(伏見)
レンブラント 光の探求/闇の誘惑
版画と絵画 天才が秘めた明暗表現
レンブラントと言えば「夜警」に代表される光の絵画だが、今回は版画に焦点をあてた内容。
メインは版画とは言え、数は少ないものの油彩画も展示されており、いわゆるレンブラント・ライトを多能できる贅沢な展示。
版画のレンブラントは一言で言えば「闇」。長谷川潔が「黒の版画家」と表されるが、その何百年も前に、試行錯誤の中、あの闇の表現にたどり着いたのはスゴい。
版画の用紙に、こだわったり、同じ版を改版しながら刷っていくような過程も展示されていて、間違い探し的に楽しめる。
名古屋市蓬左文庫
建中寺と尾張徳川家ゆかりの寺院
-法然上人800年大遠忌-
名古屋の天王まつり
当麻曼陀羅(0626まで)が展示されていると言うことで見に行く。非常に大きな掛け軸で上部のみの展示だが、痛みもあるものの、彩色がよく保たれていて、入門者にも見やすい。
徳川一門が浄土宗だと言うことを、本当に、ここ数年、最近まで知らなくて、今回も法然の800年忌の関連企画。
名古屋の天王まつりは山車祭になるのかな?
徳川美術館
徳川美術館の名陶で楽しむ
やきものの色とかたち
『へうげもの』関連企画。アニメ見てるから「荒木」が展示されてるだけで、超テンション上がった!
章別がこっているので、器種と焼き方が頭に入ってないと難しいが、もう、尾張徳川コレクションというだけで、それはザ茶道具的な意味合いがある。
豊田市美術館
フェルメール
《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展
2011.0611~0828
名古屋市美術館(伏見)
レンブラント 光の探求/闇の誘惑
版画と絵画 天才が秘めた明暗表現
2011.0625~0904
☆徳川美術館
企画展示
徳川美術館の名陶で楽しむ
やきものの色とかたち
☆名古屋市蓬左文庫
建中寺と尾張徳川家ゆかりの寺院
-法然上人800年大遠忌-
名古屋の天王まつり
2011.0528~0724
『フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展』 音声ガイド作品リスト附 ガイド数:24点 所要時間:約35分 ガイド制作・音響演出:A&Dオーディオガイド ナレーション:佐々木蔵之介氏
*好みもあるが、1点1点の解説がやや長い。
*マニュアルを知らないのであれだが端末を首にかけずに、そのまま渡された。逆に汗をかく時期なので好意的。利用者、貸出し者、双方にストレス・フリーな方法を心がけたい。
『レンブラント光の探求/闇の誘惑』 音声ガイド作品リスト附 ガイド数:22点 所要時間:約30分 ガイド制作・音響演出:A&Dオーディオガイド ナレーション:辰巳琢郎氏
*好みもあるが、非常に心地いい解説時間。
*少し込み入った解説も辰巳氏というキャラクターがあいまって、ストレスを感じさせない。ナレーターのタレント起用には懐疑的だが、タレント起用の強みを見た。「裸の女」と言うだけで聖書の、どこの誰と思いつかない人なんで。
2011年06月20日
3題
岐阜市歴史博物館(岐阜公園)
古地図~地域から世界へ~
前期展は岐阜県図書館の蔵品。後期展は岐阜市歴史博物館の蔵品の展示で今は後期展。
伊万里焼の日本図がいいの。小人黒とか女護国とか実際にはない島や松前と蝦夷が別々に描かれていたり、当時の地理認識というか思想性がキレイにでている。
古地図と言えども、荒唐無稽性だけが際立つのではなくて、村絵図や城下図、曲輪図なんかは生産性や軍事的な性質の中で正確を旨として描かれていて、そちらが中心の展示になる。
イントロとしての日本図、(1)村絵図・町絵図、(2)国絵図・藩領図、(3)合戦図・城絵図、(4)近代の観光を目的とした鳥瞰図という章別け。
鳥瞰図も見るべきがある。富士山を表現するために渥美半島が消えたり、伊勢湾から北を見るのか、金華山から南を見るのかで、当たり前だが全然別の図面になる。
一宮市博物館
硯ことはじめ
民俗と考古のハイブリットな展示。
民俗の方の筆と墨で筆記する文房具の総説はためになる。墨、筆、紙、硯の伝統工芸としての制作方法が詳しく紹介されている。
考古の方は、うらむべくは立ち位置がはっきりしない。中央の優品の総説にするのか? 地域の硯のレビューにするのか? ハイブリットというか硯の種類に応じてカテゴライズして並べられている。どうも過去の文献や展覧会で注目を浴びているものを中心に集められた感じがする。それだけ研究の進んでいない分野と見るべきか?
実は稲沢に硯の専門家がいるのだが、所蔵元程度のあつかいで、その辺のリサーチも、いささか甘いという評価は厳しすぎるか?
煤を集めるための蓋の遺物展示は貴重か。
春日井市中央公民館
森浩一文庫展示
寺社境内図の版画展
前期・後期で展示替えの部分もあるとのこと。1フロアのこぢんまりとした展示。
境内図と本尊のお札というのは、近世の旅のアイテムとして注目すべきもの。
そのようにものが収集される形で名所図会のような絵入りの地誌が誕生するのではないだろうか?
そんな中で「大念仏會中出店図面」は異色の境内図。いわゆる壬生寺の大念仏會(壬生狂言?)の時の出店の領域図で、一般向けに配布配布された境内図とは異なるのではないか? 興味深い資料。
岐阜市歴史博物館(岐阜公園)
企画展
古地図~地域から世界へ~
2011.0422~0529(前期)
2011.0603~0710(後期)
一宮市博物館
企画展
硯ことはじめ
2011.0618~0731
春日井市中央公民館
森浩一文庫展示
寺社境内図の版画展
2011.0618~0717
2011.0917~1030
2011年06月12日
2題
名古屋市博物館
フリールーム
3000年前の名古屋
-緑区雷貝塚・守山区牛牧遺跡-
名古屋市内の縄文遺跡の展示。
出土地不明の東北のものなのかな? いわゆる亀ヶ岡式と呼ばれそうな、つるつるで太い線を配置した鉢も何点か展示されていた。
縄文は判らないので、見ただけ。
名古屋市博物館
テーマ10
古筆のたのしみ
展示にちなんで、はくぶつかん講座があったので、それを含めて。
圧倒的に数をこなしていないからなんだろうけど、読めない。開き直って読めなくても仕方ないと思う。読みを確定していくことは、もちろん大切なことだが、可能性の幅を追求していくという意味では「○○かもしれない」という可能性は幅として必要! と開き直ってしまえ。
掛け軸と屏風、手鑑帳の展示。手鑑帳は展示替えアリ。
日本において、どのように古筆が鑑賞され、どのような権威付けがなされていたかも理解できる展示。
個人的に一等は「夢記切」内裏に女房がいて犬がいてという内容。『枕草子』に取材できそうな「内裏・女房・犬(翁丸)」という組み合わせ。それと明恵の「犬好き」という属性。『枕草子』の享受が典籍であったのか口伝えだったのか興味がそそられる。(とか書いたら激怒する人もいるんだろうな)
藤原俊成が定家の父で冷泉家の先祖になるというのはあんまりピンとこなくて、慈円とか宗尊親王とか、その古筆の中や極札に登場する人名にキュンとなる。
松坂屋美術館(矢場町・南館7階)
誕生110年記念
荻須高徳展 憧れのパリ・煌めきのベネチア
松坂屋美術館、美術館「えき」KYOTO、稲沢市荻須記念美術館、日本橋三越本店の巡回展。
なんで展示目録がないんだ?
これまで、あまり紹介されていない作品も多いのではないか?
1930年代、1950~60年代、1970~80年代と作風の変化が丁寧に追える。
パリ、肖像画・静物画、ベネチアという章別。ベネチアの作品群に代表されるのだが、オギスと言えば反射の画家なのではないだろうか? それが写生による探求によるものなのか、絵画描写論的な技法論の体得によるものなのかは今後検討がなされるべきだろう。
しかし、例えば、51では水面の中央の白の描点は見ようによっては違和感がある。これが1930年代の作品。これが50~60年代には53のように3m程離れて水面を見た時、絵画として描点が消失して反射そのものになる。これが70~80年代になると60のような、技巧的にさえ見えるのだが、手前の建物を黒っぽく描き、最後方の建物のみ黄色くし、水面の反射にコントラストを強調する作品群になってゆく。54もいい。オギス作品の特徴は2回見られるということ。まずはギリギリまで近づいて筆運びに注目してみる。筆の勢いと筆致。次に3m程離れてみる。近くで見た描点がすべて消失して絵画としての作品が立ち現れてくる。無造作にさえ思える絵の具の重なりが見事に壁や水面になっている。
画集よりも、やはり実物をみたい展示。
名古屋市博物館
フリールーム
3000年前の名古屋
-緑区雷貝塚・守山区牛牧遺跡-
テーマ10
古筆のたのしみ
2011.0531~0710
松坂屋美術館(矢場町・南館7階)
誕生110年記念
荻須高徳展 憧れのパリ・煌めきのベネチア
2011.0611~0703