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2011年07月30日

3題×2

祖父江町郷土資料館
昔のくらしと夏のくふう
 まあ企画展というか玄関に風鈴と企画展示室に蚊帳がつってあるくらいか? あんまりピンと来ない。
 せっかく企画展示室があるのに、なんか活用のピントがずれてるんだよな。
 ようは祖父江のビジターセンターで昔の道具を衣食住、年中行事に着目して展示してある。ある意味、展示が常設展で完結していて、
 逆に牧山や文人に着目するにしても、必ずしもビジターに親切ではない。短冊なり老子の講書なりの実践的な翻刻を変体仮名の存在から説明するような展示をB紙程度にまとめてみてはどうだろう? ああ、あと文人の説明のキャプション字が小さい。14~36ptくらい? 展示ケースあるから印字してみていろいろやらないといけないんだけど。

祖父江支所ギャラリー
いなざわの歴史
 一色青海遺跡、尾張国分寺、聖徳太子、涅槃図だったつけ? パネルによるコラム展示。
 尾張国分寺の報告書、出てるのか? また買えないのかな? 聞けばよかった。A案、B案並立はいいが、近年のネット上の研究、いわゆる変形寺域論や西院伽藍の可能性についてリジェクトして本当に最終版なのだろうか? あと、北端については、きちんと航空写真から検出可能。考古学だから歴史地理学的手法はとらないというのは潔いが偏屈。
 いかん展示と関係ない話をしてるな。なんていうの、パネルによるコラム展示には限界があるという前提が見え透いて気分が悪い!
 それこそ「梅鉢文に萌え!」的なコラムってパネル展示に向いてるんだよね。あのまま説明しても小学生でも理解できると思っちゃう人なんで、ハードルが高いか? もっと自分の専門分野でいいからフルスイングして欲しい。

名古屋市博物館
仁王立像修復記念 特別展
甚目寺観音
 音声ガイドでは慶派の流れ的な解説をされているが織豊期の典型みたいな仁王像。
 この仁王像の年代から考えて、十王の年代も、仁王に非常に近接していると思う。
 なんていうの、かわいい系の顔が大きくて頭身数が減るような感じが宿院仏師とか近江の弁天像と共通する。
 地元の大工? が中央なのだろうか? 修行を経て仏師として活躍する。信長の焼き討ちブームから秀吉の寄進ブーム的な流れ。
 案外、仁王と十王の方が現在の研究段階として熱い! まったく色物という意味ではなく。
 愛染明王も語っておくか。造立時期や造立主、納入品、手に施された呪術。全てにおいて恐ろしくなるくらいの凶器というか最終兵器としての愛染明王。
 こう書くとオカルト好きと思われるだろうか? いたって、まじめなんだけど・・・
 こういうものが甚目寺にも施入され稲沢の性海寺。なぜ二ツ寺神明社のみを福島正則時代まで下げる必要があるのか疑問に思う。神明社の成立を伊藤氏は、さらに明確に言及すべき。オレが掘った遺跡は古墳で県埋文の某が掘るとハズレばかりというのは研究者として真摯的なのだろうか?
 質問で補えばよいと考えたのかもしれないが、世の中は、そんなに甘くない! ドイツ式の考古学で、これでもかこれでもかと資料批判を行って、それでも古墳以外は考えられないということは、人にモノを説明するイロハのイなのではないだろうか? そのように重大なことを質問で補えば、あるいは一切考えていないとすれば、扱った資料、報告された内容にもマユにツバをつけなくてはいけなくなる。氏は、多くの知見を無に帰すつもりなのか!
 能田旭の墳丘だけでも、一般に考えたって要説明なのだ、二律背反してるから。
 と、冬の講演会の感想になってしまった。

織部・大数寄(ダイスキ)・コレクション
 名古屋市博物館と徳川美術館に織部作の茶杓が出ていた。
 名古屋市博物館は陶器としてのザ織部的な作品を集めていた。
 しかし、オススメは実成寺の織田敏定の肖像画。織部よりは時代が前になるが、尾張における肖像画の傑作、信長政権樹立の舞台装置としての織田本宗家というは『へうげもの』見るにも『江』見るにも、あっても損はない知識。

徳川美術館
徳川の姫君
 大丸松坂屋から徳川美術館に寄贈があったのは、当たり前にショック。これがクラウンジュエルとしての行動なのか? 不動産の動産化なのか、いまいちつかめていないので、厳しいことは言えないが、収蔵品が散逸していることには変わりがない。
 大丸松坂屋コレクションをプレゼンテーションする展示が何回かおこなわれ、再評価も、そろそろという矢先なので、やはりショック。1具の価値、研究され続ける価値、その価値に裏打ちされた信用というプライスレスな存在なんだけどな。
 まあ、学芸課が解体とかなって、何も知らずにウエスとかに使われたら身も蓋もないからね。
 展示は殿様につづいてお姫様。

名古屋市蓬左文庫
歿後400年 加藤清正の時代
城造りあれこれ
 加藤清正も織部や江と同時代の人。朝鮮出兵で虎を倒した人というと逸話だけ聞いた人もいるのかもしれない。なんと、その虎の頭蓋骨が展示されている。
『戦国鍋tv』でも、アイドル歌手として出演していたり、それこそ明治神宮の清正井、名古屋城天守閣の石垣と、知り始めると興味が出てくるでしょ?
 城造りの方は、多くの曲輪図。清須城の曲輪図は、あんま見たことない図だった。五条川の川州になるのか? 河道の他に沼があって、どちらが本流なのかよく判らない。
 全国の城の曲輪図や兵法の資料も。

祖父江町郷土資料館
昔のくらしと夏のくふう
2011.0725~0805
午前9時~午後4時30分
祖父江支所ギャラリー
いなざわの歴史
2011.0725~0805

名古屋市博物館
仁王立像修復記念 特別展
甚目寺観音
2011.0716~0828
織部・大数寄(ダイスキ)・コレクション
2011.0705~0831(名市博のみ)

徳川美術館
企画展示
徳川の姫君
2011.0730~0925
名古屋市蓬左文庫
歿後400年 加藤清正の時代
城造りあれこれ
2011.0727~0919

2011.0730
『甚目寺観音展』 制作:カセットミュージアム 音声ガイド解説作品一覧附 解説件数:31件 ナレーション:窪田涼子氏
*端末の問題だが早送りボタンで次の解説に進むような機能は意外にないと不便。案外、最近1番気になるポイントだったり。
*小学中学年くらいの子供が多く借りていたが、多少、ハードルが高い気も。日本史を学習するのが6年生なので〈未分化な昔〉の中でストーリーを語らないといけない。「信長の次男」が通じない可能性がある、そうなるともう何も説明できない。
*キャプションを写してる子供も見かけたが、どっかで図録や目録、音声ガイドの使い方を説明しないと「勉強した」「疲れた」的なネガティブなイメーヂが博物館に小さい頃に、すり込まれるのはよくない。これはオレの仕事だな。

2011年07月10日

3題

三重県立美術館
福田繁雄大回顧展
 美術の分野で福田氏といえば、この福田繁雄の一族ではないだろうか?
 福田天人氏が画家と紹介されて「この一族?」と思ったのは、何日目だっただろう?
 本題とそれた! 現代アートというと難解の代名詞みたいなモノだけど、福田のアートは明快。
『日曜美術館』で紹介されたので、印象深く思っている人も多いだろう。
 個人的には柳原館の方を先に見ることをオススメ。濃密な福田繁雄のエッセンスが凝縮している。
 そして1階の企画展示室へ。2階常設展の第2室がトリックアートと現代アートのセクションになっているので、入り口で展示目録を受け取ることもオススメ。
 誰の、どの作品が、どんな所で共通しているかが、しっくりと頭の中に入ってくるのではないだろうか?
 そして思うの。福田繁雄だけがアートしてたわけではなくて、時代と呼応しながら作品、作ってたんだなって、

鈴鹿市考古博物館
国府の歴史地理学的研究in鈴鹿
 ロビー展なので数は少ないが、伊勢国府の研究史がしっかりとつかめる展示。
 京都大学から所蔵品を譲り受けた、ことによる展示。
 でも国府の地名の残る三宅神社の辺りは、本当に非国衙なのだろうか? 川を挟んで北側に国司の政務室である長者屋敷があって、南側に在庁官人層の執務室的な組織が展開してたとか、時代が下るにつれ、在庁官人の勢力が強くなったり国庁の機能や建物が廃れて里内裏的に三宅神社付近を中心に国衙機能が移転したとかは、考えなくてもいいんだよね、考古学では。
 まあ、余所のことだから越権行為的だが。

愛知県美術館(栄)
東北復興支援 特別企画
「棟方志功 祈りと旅」展(仮称)
 東北の飢饉とか地震とか歴史の積み重ねとしての悲劇が、棟方という語り手を通してスパークしたような展示というと、震災を軽んじているとお叱りを受けるだろうか?
 弁天様もいいし、十大弟子もいいし、乾坤の柵もいいし。
 今、見ておきたい日本の美。

三重県立美術館
ユーモアのすすめ
福田繁雄大回顧展
2011.0709~0904

鈴鹿市考古博物館
ロビー展示
国府の歴史地理学的研究in鈴鹿
2011.0709~0821

愛知県美術館(栄)
東北復興支援 特別企画
「棟方志功 祈りと旅」展(仮称)
2011.0709~0904

2011.0710
『棟方志功 祈りと旅展』 音声ガイド解説作品一覧附き ナレーション:中村修三氏 案内時間:23分 制作:カセットミュージアム
*要点を中心にコンパクトにまとめられていて聞きやすい。
*章立てのガイドを工夫できないだろうか? 章の最後の作品にくっつけてしまって「次のコーナーでは○○について見てゆきます」みたいな。章ごとの移動が少し距離があったので。

2011年07月09日

へうげもの3題

愛知県陶磁資料館
アンデス・メソアメリカ文明展
 ついでと言ったら失礼だが、しっかり見てきた。
 いまだにオルメカ文明が、どの辺のだかよく判らない。ちゃんとキャプション読もうよ…
 中米を、メキシコを中心としたメソアメリカ、南米の北部のアンデス、その中間領域と分類して、それぞれの歴史遺産と現在のメソアメリカの文化をコンパクトにまとめてある展示。
 日本に所蔵されているメソアメリカ文明のような側面もあり、所蔵先がユニーク。

愛知県陶磁資料館
へうげもの関連
 愛知県美術館の木村定三コレクションを中心に常設の日本の焼き物の一部として構成されている。
 まあ桃山~江戸の陶磁は織部好みのみではないが、逆に初心者にも、奇をてらった独特の物腰が親しみやすく、これまで堅苦しくて敬遠してきた向きも、入門として楽しめるのではないだろうか?

瀬戸蔵ミュージアム
織部・大数寄(ダイスキ)・コレクション
 あの焼き物曼荼羅の中に織部が展示してあるの。想像しただけで壮観でしょ。
 須恵器から桃山前夜までのロクロに代表されるシンメトリーの造形が、突如、碧、黒、赤、白の原色に近い彩りを伴って、崩れていく。指により、ねじ曲げられた沓茶碗。四角を2枚重ねたような織部の向付。
 瀬戸市の歴史としての信長による瀬戸山離散から美濃での織部・志野の萌芽。瀬戸への逆輸入とダイナミックに地域のクロニクルが展開している。
 加藤春岱の作がすこしまとめて見れるのか?

徳川美術館
徳川美術館の名陶で楽しむ
やきものの色とかたち
 常設展の茶の湯のセクションも、へうげもの関連。展示替えもあるので、チェックしておきたい。
 企画展は前にレビューしたので割愛。
 あと、蓬左文庫に展示の涅槃図。痛みはあるものの、彩色のよく残った大幅。涅槃図というと、下半分の群像のイメーヂが強いが、なんせ大幅なので下はあまり見れない。その分、写真図版が展示されているので、それで確認したい。

愛知県陶磁資料館
アンデス・メソアメリカ文明展
2011.0528~0731

瀬戸蔵ミュージアム
織部・大数寄(ダイスキ)・コレクション
2011.0705~0925

徳川美術館
企画展示
徳川美術館の名陶で楽しむ
やきものの色とかたち
2011.0528~0724

2011年07月04日

レオナルド・ダ・ビンチ

四日市市立博物館
レオナルド・ダ・ビンチ
もう一つの遺産
 そんなにレオナルド・ダ・ビンチというと「絵画の人」というイメーヂがあるのだろうか?「もう一つの遺産」と言う副題があまりピンと来ない。
 技術屋というか夢想家としての側面をファクシミリ版の手稿から照らし出した展示。手稿から復元される再現模型も多く展示されていて入門的内容。

四日市市立博物館
学習支援展示(常設展示室内)
四日市空襲と戦時下の暮らし
 まあ、毎年恒例の展示。
 新鮮だったのは防空壕の模型の展示。名古屋などでは考古学的な調査対象にもなっているが、模型で展示されると解りやすい。

四日市市立博物館
特別展
レオナルド・ダ・ビンチ
もう一つの遺産
2011.0702~0904

四日市市立博物館
学習支援展示(常設展示室内)
四日市空襲と戦時下の暮らし
2011.0617~0828