« 2011年09月 | メイン | 2011年11月 »

2011年10月30日

3題

奈良国立博物館
第63回 正倉院展
 別にウチが多くを語る必要はないんだけどね。
 初日だったからか例年に比べて、待ち時間が短かった。
 12時のボランティア解説に10分遅れくらいで入って、華鬘以後の解説を聞く。音声ガイドは、ジュニア仕様を借りたが、大人向けと遜色ない内容の解説なのでは? ただ、正倉院展で35分の解説は長すぎる。フルで聴いても返却口で立ち聞きする時間が出る。
 みんなそういう風にならないところを見ると、一部しか聴いてないか、悪く言えば、どっかで諦めてしまっていないか? それでは音声ガイドはもったいない。
 個人的には解説ボランティアを有料にするかして、音声ガイド会社に仕切らせたらいいのでは? 正倉院展に限定してしまえば。
 いかん! 出陳品の話をせねば。
 60回で一巡のハズだが63回でも初出陳がある。
 聖武の袈裟や蘭奢待も重要だが天武期からの伝来ではと思わせる御物も多い金銀鈿荘唐大刀や十二支八卦背円鏡なんか。柄香炉は聖徳太子の遺愛品とかでは?
 大刀の飾り金具なんかが、高松塚の大刀に非常に近似したカタチで、聖武から50年ほど前の7世紀末までは十分に上げられる円鏡の四神も、よく言われることだろうが、キトラ、高松塚、薬師寺の台座と共通の意匠で、このような世界観が天武の意思により形成された可能性は十分、考えられよう。
 ただ、天武期から天皇家に伝世したモノが、なぜ東大寺に献納されたのかは十分議論されなければならないことではないか? 聖武までは、それらの宝物が天皇を天皇たらしめるレガリアであったモノが、その意味が消失したのだろうか?

なら仏像館(奈良国立博物館・本館)
 ピカ一の1点をあげれば、金剛寺の降三世明王。中央展示室から、展示室に入ると睨まれるの。しかも、で、デカい!
 一般の降三世明王と異なり一面二臂像に作られ、中尊の大日如来、右脇侍の不動明王に釣り合うように瑟瑟座に座る。そのイコノグラフの幻惑が、さらに、この尊像の畏怖感を強調している。後背の火炎の造形もすばらしい。

東大寺ミュージアム
開館記念 特別展
奈良時代の東大寺
 第I期〜第VI期に分けて展示替えをおこなうそう。
 法華堂(三月堂)の改修にあわせて、中尊の不空羂索観音、脇侍の塑像の日光・月光菩薩が公開されている。
 不空羂索観音は宝冠や後背など荘厳具は一切つけていない珍しい姿。法華堂では遠目になるがミュージアムでは間近にみられる。この機会に1度は訪れておきたい。
 ただ注意したいのは「東大寺の考古学」のセクションは、十分、それより前を楽しんでから、見なければならない。あんなトラップが仕掛けられているとは・・・
 音声ガイドも内容豊富。個人的にはトラック3を聞き終わるまでに、東大寺の考古学まで来てしまった。15トラックあるので、不空羂索観音の前のベンチに座ってずっと聞いていた。隠しトラックというか補助説明もあって楽しい。端末も新しくカラー液晶を搭載していて、展示替えの案内や、用語を図示して説明しているなど、IT的にも興味を引く。

奈良国立博物館
特別展 第63回
正倉院展
2011.1029〜1114

なら仏像館(奈良国立博物館・本館)

東大寺ミュージアム
開館記念 特別展
奈良時代の東大寺
2011.1010〜2012.0401
(第I期〜第VI期に分けて展示替え)

2011年10月22日

4題

岡崎市美術博物館(中央総合公園内)
三河浄土宗寺院の名宝
 大きく歴史編と美術編に分かれる。歴史編は禁制のような支配関連の文書が多く集められているので、興味のある方は、その手の準備をしていくとよい。
 美術編で興味深いのは「法然上人臨終絵」と題される絵画。釈迦の涅槃図を模して法然の臨終の姿を書くのだが、摩耶夫人の位置に5仏を配置しているのが興味深い。5仏は上段中央に宝冠をいただいた定印の尊像、上段左が来迎印の阿弥陀、下段左が薬師、右が定印の阿弥陀と密教的な五仏とも一概に相似であるとはいいにくい。真宗(浄土教系)にも七高僧のようにマンダラ的な配置を採る画像が多く残されているので、そのような作例との比較は今後の課題なのでは?

知多市歴史民俗博物館 ふゅうとりぃ・ちた
大野谷の文化財
「法然上人臨終絵」の元図とも目される「圓光大師涅槃像(法然上人臨終絵)」が展示されていたので、それだけでも一見の価値あり。
 こちらの方が、法然の容姿や衣裳などが儀軌的な法然上人に近い感じがする。上部の5仏については、遠目だったこともあり判然としない。
 惜しむべきは「慧可断臂図」を借りてこれなかったのかなぁ?京博改修中だから、案外借りれたのかもと外野は、やかましいことを言う。

熱田神宮宝物館
日本の神話〜近・現代絵画を中心に〜
 近現代絵画を使った神話や歴史の展示は最近活発におこなわれているが、神社関連の独自のネットワークがあると見え、レアな作品も少なくない。
 それ以上に『熱田神宮本・日本書紀』が結構な関数展示されているのは、注目してよい。
 ああ、あんな背紙文書のある典籍なのかと日本紀好きには、これだけで十分満足できる展示。
 キャプションでヤマトタケルのことを「オウス」と表記しているので「ヲウス」とするのが本則ではと指摘したら「それは近代的な〈読み〉の問題で兄を「オオウス」ヤマトタケルを「オウス」としている典籍があって、それを持ってきたから間違っていない」と返されてしまった。別に兄は「オオウス」でもいいからヤマトタケルを「ヲウス」としておけば、まぎらわしくないと思うのだが、昨今の研究史にたいして全否定してからのバカ賢い的な学問のモードには疑問符が、、、と、僕ももう古くさい先達なのだ・・・

松坂屋美術館(矢場町・南館7階)
茶碗 今を生きる
 長次郎の「ムキ栗」と志野の「住吉」が見れただけで、もう、しあわせ!
『へうげもの』の最大の見どころは自分が現代の芸術領域に、どの程度の見識があるかとの戦いである。
 等伯がドット柄を用いるのが「えっ?クサマ風?」とならないと、なんとなく片手落ちな感じがする。
 そんな意味で「住吉」は今週の『へうげもの』にぴったりなのだ。

岡崎市美術博物館(中央総合公園内)
法然上人800回忌記念
三河浄土宗寺院の名宝
−浄土へのいざない−
2011.1008〜1120

知多市歴史民俗博物館 ふゅうとりぃ・ちた
特別企画展
大野谷の文化財
2011.1022〜1204

熱田神宮宝物館
秋季企画展
日本の神話〜近・現代絵画を中心に〜
2011.0930〜1025

松坂屋美術館(矢場町・南館7階)
松坂屋創業400周年・松坂屋美術館開館20周年記念
茶碗 今を生きる
−樂歴代と時代を語る名碗−
2011.1019〜1127

2011年10月17日

飛鳥3題

*奈良県立万葉文化館と橿原考古学研究所附属博物館、飛鳥資料館の3館連携で割引きあり。

橿原考古学研究所附属博物館
仏教伝来
 飛鳥寺から頭塔くらいまでの時代の仏教考古学というか、出土品を中心にした展示。
 やはり瓦と「土専」仏が中心になるのか? 金属製品のピンセットなんかも集めていた。
 現代との連続性から袈裟や香の現代のモノを展示している。

飛鳥資料館(奈良文化財研究所)
飛鳥遺珍−のこされた至宝たち−
 東京国立博物館の法隆寺の金銅仏が2点来ている。
 他の2館と比べると規模の上で見劣りするので、飛鳥資料館を1番に訪れたい。
 どこのどれがレプリカで、どれがどっちの展示だったのもよく解らなくなるくらい、3館に通った展示なので、3館連携という見方で十分満足できる。
 金銅仏もいいのだが、漆関連の1階の展示も興味深い。容器に蓄えられるのが、産地からの輸送なのか、使用の便を考えての小分けなのか? も気になる。

奈良県立万葉文化館
大飛鳥展
 日本画展示室(右の広い方の部屋)を十分に使った飛鳥の仏教美術を中心にした展示。
 飛鳥時代の金銅仏も有名どころが広く集められている、小牧・正眼寺、大阪・野中寺など。あとは飛鳥から都が移動した後の飛鳥に残った寺院の仏像や仏画群。なかなか日の目を見ないテーマだけに興味深い。平安仏や中世〜江戸時代の仏像・仏画。
 企画展示室の日本画の展示も幽玄な感じ「蒲生野」が好き。

橿原考古学研究所附属博物館
秋季特別展
仏教伝来
2011.1001~1120

飛鳥資料館(奈良文化財研究所)
秋期特別展
飛鳥遺珍−のこされた至宝たち−
2011.1014〜1127

奈良県立万葉文化館
特別展 大飛鳥展
2011.1001~1113

2011年10月10日

一宮3題

一宮市三岸節子記念美術館(旧・尾西)
佐分眞展
-洋画界を疾走した伝説の画家-
三岸節子
風景画家として-滞欧期-
 2階が特別展の佐分眞展、1階が常設のテーマ展示。
 一宮市博物館の絹谷幸二展とかけ持ちする場合は、こちらを先に見るのをオススメ。絵画史というか時系列的に前後関係があるので、この方がすっきりする。
 佐分は荻須高徳と同じような時期の洋画家。エコール・ド・パリになるのか? 昭和1ケタの時期の作品が多く並べられていた。
 描点が大きく、絵画限界が遠くなる輪郭のやわらかい作風。書翰や習作もけっこうな点数、展示されている。
 1階の方は個人的に赤い屋根の家の作品群が好き。20歳の自画像に恋しそうになった。故人の過去に恋するだなんて、、、

一宮市尾西歴史民俗資料館
江戸時代の旅
 バスがこっち経由しかないから、よってみる。
 江戸時代は藩単位の支配体制なので、旅は難しかったのでは? と思っていたが、外国人からすると「旅行好きの民族」とみられるような一面もあるのか。
 神社仏閣に対する「おかげ参り」のような現象も確かにあるわな。
 道中図、神社仏閣の番付、名所図会など旅の事前準備的なモノから、矢立のような旅路での携行品などが展示されている。
 1階の常設展示、別棟の脇本陣とあわせてみれば、江戸時代の旅が立体的に立ち現れてくるのでは?

一宮市博物館
絹谷幸二展
 ああ、あのエントランスの壁画の作者なんだ。
 ポスターに鼻筋の2つある顔の絵があって、ああピカソのキュビスムの系譜なのかと思ったら、仏像の絵なども手がけておられて、三面大黒と解釈した方が正しいのかもしれない。
 色彩の洪水。あふれ出るモチーフの泉。
 絵画に留まらず、立体作品も多い。展示室が狭く感じるような詰め込み方。

一宮市三岸節子記念美術館(旧・尾西)
特別展
佐分眞展
-洋画界を疾走した伝説の画家-
2011.1008~1123
三岸節子
風景画家として-滞欧期-
2011.1008~2012.0122

一宮市尾西歴史民俗資料館
特別展
江戸時代の旅
2011.1001〜1204

一宮市博物館
市制施行90周年記念 特別展
絹谷幸二展
2011.1008~1127