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2012年06月24日

2題

田原市博物館
渡辺崋山と平井顕斎
渥美古窯と現代陶磁
生誕140年 岡田虎二郎展
 やはり特筆すべきは「渥美古窯と現代陶磁」だろう。
 館蔵のコレクション作品による現代陶磁と渥美窯の抱き合わせなのだが、館蔵のコレクションが手堅く見応えのあるものがちらほら。個人的には命銘コンテストなんかを行ったらなじみもわいていいのかなとも思うくらい、個性的な作品が目白押し。
 渥美窯は渥美郷土資料館の蔵品になるのか皿焼窯と伊良湖東大寺瓦窯もものももちろん、大アラコ窯など普段みられない資料や、その他の古窯の出土品を概観的にあつめてある。
 瓦経片や大アラコ・竜ヶ原1号の藤原氏銘など、文字資料も目新しい。
 もう1つ紹介しておくと、皿焼13号の宝塔片と格狭間。性海寺の宝塔や西大寺の鉄塔のような造形を想像したくなる。
 渥美古窯が操業される時代は、まさに清盛時代。大河ドラマ『平清盛』に触発されて、その時代の風俗に触れたいのなら、陶器の分野では参考になるのではないだろうか?
 平井顕斎は崋山の弟子。岡田虎二郎は田原生まれの静坐法の考案者。

豊橋市美術博物館
文化人・芸能人の多才な美術展
 すげえ感動した。この種類の感動を二十余年経験してなくて、最初は、それが感動であると感じられないくらいに、心が動かされ、思いをめぐらした。
 内容は、いわば現代の芸術による百人一首!
 どうしても芸能人というと黒い噂というか、暴力団とつながりのある事務所社長と夜な夜な酒宴に興じるようなチ〇ピラ的な若い衆というのも少なくないと聞こえてくるが、世間的に「好青年」と評判の歌手の方の作品がメインというか、観覧者が、そこに留まっていることが多かった。
 例えば、作品を1点あげてみると、北野武氏の龍の絵。映画『アキレスと亀』の中でも作品の制作工程をいくつか示しているが、北野氏の興味として美術史というか製作技法を時代順に追っていくと言うことが、最近の北野氏のライフワークと言っても過言ではないのでは無いだろうか?
 作品を見ると、スーラ的な色の構造分解(カンバスの上に原色を重ねて視覚的に混色を表現する)的な点描という形式を取りながら、草間弥生的なドット表現にまで昇華されている感じ。美術史的な認識と作画的な技術が融合した作品であろう。
 まあ1つひとつの作品がどうすごいかを語るよりも、それらの作品が群として蒐集されているということのスゴみ、威圧感というのを体感して欲しい。
 芸能人・文化人と言うことで作品や、このような企画自体を低く見る向きもあるかもしれないが、極個人的には制作者の何人かに興味があるのなら、このような展示を、逆に見るべきだと思う。ちゃんと見ておかないと眼がくもってくるというと、少し言いすぎか?

 おしむらくは、政治家の作品は正直、引いた。コレクションとして収蔵することは構わないと思うが、あの震災の直後に「政治家が習字をしていた」という幻想は、正直、リアルにきつい。
 遅れに遅れて、今頃になって大連立的な(今となっては)「野合」とも揶揄されかねない。しかし、震災直後なら、どうだったのだろう?
 真剣に震災前の「ねじれ国会」が求められる国会の姿だと思っていたとしか、現段階では判断できない。
 あんな、ねじれるんなら国会開かずに内閣の政令で全部、通しちゃえば、よかったんだよ! 無能な首相を選んだモンだと思う。
 展覧会とは全く関係ないが・・・

田原市博物館
渡辺崋山と平井顕斎
渥美古窯と現代陶磁
生誕140年 岡田虎二郎展
2012.0602〜0805

豊橋市美術博物館
文化人・芸能人の多才な美術展
2012.0612〜0624

2012年06月23日

名古屋ボストン美術館

名古屋ボストン美術館(金山)
ボストン美術館 日本美術の至宝(前期)
 巡回展。
 名古屋だけ会場の都合か、前期展と後期展に別れている。また、仏像がまったく出陳されない。仏像が見たければ、来年4月に大阪市立美術館に巡回してくるので、この時をねらいたい。
 章立ては(1)神仏、(2)2大絵巻、(3)水墨画、(4)近世絵画(長谷川等伯、狩野派、若冲)、(5)曾我蕭白という感じ。
 音声ガイドが全てではないが充実している。前後期展、通しての割引とかあるとうれしかったのだが。

 あえて、どの作品がどうかと言うことは語らないが、名古屋市とボストン美術館が提携しているのだから、せっかくだから近隣の方は見ておいたほうがいい。(逆に内容を知っている人は必ず行くレベル!)

名古屋ボストン美術館(金山)
ボストン美術館 日本美術の至宝
2012.0623〜0917(前期)
2012.0929〜1209(後期)
http://www.boston-nippon.jp/

2012年06月18日

清盛と古事記

京都文化博物館
平清盛
 大河ドラマ『平清盛』にちなんで、清盛時代の展示。
 龍馬展はホントにスゴい人混みだったが、清盛展は若干の余裕がある。会期末には混むだろうから、お早めの来館をオススメ。
 同時代資料として日記類を駆使しながら時代は下るが絵画資料を使って、立体的に「清盛時代」を立ちあらわしている。平家納経は3本が本物で2本が大倉集古館の複製。まあ肩肘張らずに、その美しさを鑑賞できる。厳島神社の建築模型も。ここまでが4階。
 3階は両部曼荼羅と仏像・仏画、日宋貿易の文物、『平家物語』の成立と平家の没落。
 音声ガイドは平時子こと深田恭子さん。清盛様が、清盛様がと連呼されるのが、少しつらい。まあ、ひとえに、自分1人がための深キョンなんだけどね。会場ごとのボーナス解説もありストレスもなく十分に楽しめる。音声資料の提示が丁度4階から3階への移動にあたり、もう少し長くてもよかったのかもしれない。
 図録・グッズは3階に特設のショップがあるが、1階の便利堂も、今一度チェックしておきたい。節電には、かかせない扇や、暑中見舞用のハガキなども、一歩、差を付けるグッズが盛りだくさん! 個人的にオススメは竹製のハシ「かぐや姫」。銘物だよ、あれは。
 2階の常設展示もリフレッシュしている。以前の常設展示でもビジュアル性を重視した展示だったが、ビジュアル感は、そのままにモノにも焦点をあてている。最大の改良点は展示室を左右に分け、企画展示部分を設けたことだろう。
 現在、さしこで評判の『北野天神縁起絵巻』の複製と現代アートの展示。京都文化博物館の常設部分は、ズバリ「京都のビジターセンター」これから、どのような企画が行われるか? 注目です!
 あっ、そうそう京都文化博物館には、隠れた展示室が、実は、もう一つあります。地下鉄・烏丸御池の北口からでたエントランスのところに展示ケースが。現在は平安京の瓦と木製品。北口から出ると京都文化博物館にたどりつけなくなるおそれも。帰りによるのがオススメ。

奈良国立博物館
古事記の歩んできた道
−古事記撰録1300年−
 西館の1室のみの展示。古事記の古写本、そろいぶみはいいが、古事記裏書きとか享受資料に乏しい。
 まあ、『先代旧事本紀』は『古事記』からの引用も多く、まあ享受資料と言ってもいいが、日本紀講に関わる資料に『古事記』の序文に類似する記述があるとか。
 近年の研究では、日本紀の講書の中で『古事記』序文が創作されたのでは? という考え方も根強いが、個人的には『古事記』成立後、成立の経緯や『日本書紀』の成立によって、早い段階で『古事記』が忘れられて、平安遷都以後、新たに『日本書紀』の講書が企図される中で、また『新撰姓氏録』に代表される人材投与に関する新たな指針作りの中で「序文附きの『古事記』」が再発見されるカタチになるのではないだろうか?
『日本書紀』の講書の第1回を太安万侶が行ったのかはどうかは一旦留保(した可能性の方が高い気がするが)するが『古事記』の再発見によって、太安万侶を顕彰する〈運動〉が起こったのではないだろうか?
 そう考えた時に日本紀講の資料の中に『古事記』の引用があるとするなら、順接に「序文附きの『古事記』」からの引用と考えていいのではないだろうか?(全然、展示と関係ない話してるな。。。)

 展示そのものは太安万侶の墓誌に始まり、萬葉時代の漢字かな表記。『萬葉集』『古語拾遺』『先代旧事本紀』などの神話に関するテキスト。そして現存する古写本の出そろう室町時代の3本の古写本と『古事記上巻抄』と呼ばれる『古事記』の抄出。本居宣長による『古事記』の校訂と『古事記伝』。最後に近世・近代に生産される神話に取材した図像と『古事記』・神話のたどってきた歴史が概観できる。
 まあ展示内容の性質上、観覧者を選ぶ内容なのでは? 萬葉仮名というか古事記の本文が読めないとつまらないかも。
 西館常設は縁起絵画など、あまり見ないものが。
 地下のショップで、
http://www.amazon.co.jp/dp/4623060179/
『知ってる? 正倉院−今なおかがやく宝物たち− カラーでわかるガイドブック』
 が販売されていた。数年前から『正倉院展』の時期に読売新聞社が発行していたモノの合冊になるのか?
 まだ十分に見ていないので増補部分があるかは不明なんだけど、里中満智子先生のエッセイなど執筆陣も充実しており、子供にも読めるようルビが振られ、かといって内容も大人向けと遜色ないような正倉院入門、『正倉院展』必携書。

京都文化博物館
NHK大河ドラマ50年 特別展
平清盛
2012.0616〜0717
http://www.nhk-p.co.jp/tenran/20111020_162656.html

奈良国立博物館
特別陳列
古事記の歩んできた道
−古事記撰録1300年−
2012.0616〜0716

2012年06月03日

2題

石水博物館
曾我蕭白と伊勢の近世美術
半泥子の旅
−スケッチと思い出の品−
 新博物館になって初めて訪れた。
 阿漕駅からだと広い通りに歩道がないので、バスでの来訪がオススメか? 鉄道は1時間に1本程度、バスは2本ほど。三重県立美術館とかけもちなら、時間を調べて、こちらに先に訪れたい。
 閑静な住宅街と里山の結節地点になる静ひつな空間。
 旧博物館の津新町の駅から松菱までのガヤっとした街並みも借景として、すばらしいものだったけど、半泥子の作陶の〈現場〉、千歳文庫の残る、ゆかりの場所にしっかりと博物館として建てられたことには意味がある。
 老朽化や耐震の関係もあるのかもしれないが、千歳文庫を間近で見られないのは惜しまれる。
 展示は、1階が蕭白関連、2階が半泥子の作品と旅日記。
 まあ曾我蕭白は、あの独特の作風が、ぶっちゃけ好きかどうかの問題なので、博物館・美術館を訪れる前に、何らかのカタチで作風を確認して欲しい。
 蕭白の作風が好きなら、六曲一双の屏風は一見の価値あり。山水、トラ、タカ、ツル、寒山・拾得と蕭白の代表的な画題が惜しげもなく展開している。
 三重県立美術館にも蕭白の屏風は展示されているが、これだけバラエティーのある画題を取り合わせとしてのバランスもよく配置している屏風は他にはない。
 1階の展示は全21点、蕭白5点のこぢんまりした展示だが、館蔵や三重県立美術館の同時代作家の作品、パラミタミュージアムの萬古焼きと蕭白の通った時代の伊勢の文化的水準を概観できる内容。

 2階は欲袋が展示されている。片面が半泥子作の茶道具を中心に、もう片面を半泥子の旅をテーマに旅日記とパステル画、出版された半泥子の著作など。
 2階展示室、奥に山里茶席の復元。
 川喜田半泥子は百五銀行の元頭取。北大路魯山人や荒川豊蔵と同時代の人。数寄者として有名で、自ら作陶も行っている。石水博物館は半泥子の作った千歳山窯の近傍に立地。

三重県立美術館
開館30周年記念
蕭白ショック!!
曾我蕭白と京の画家たち
 会期中、前期・中期・後期と展示替えアリ。
 1階の企画展示室が蕭白、2階の大部分を使って蕭白前史と京の画家たち。2階1室と県民ギャラリーが常設に当てられている。
 目玉は、なんといっても旧永島家のふすま絵群だろう。とくに竹林七賢図。1種のだまし絵的な手法なのだろうが、七賢人が飛び出して見える。
 朝田寺の唐獅子図はあんなに大幅なのに恐くない。なんかネコが威嚇しているような感じ。
 グロテスクなまでに誇張された人物の表情に、アンニュイな仕草。
 そんな人物を受けたようなユーモラスな禽獣もあれば、
 野生の本能を感じされるタカのどう猛な眼力。
 手練手管を尽くしてもいかんともしがたい、あの西王母も見てみたい。

石水博物館
曾我蕭白と伊勢の近世美術
半泥子の旅
−スケッチと思い出の品−
2012.0601〜0716

三重県立美術館
開館30周年記念
蕭白ショック!!
曾我蕭白と京の画家たち
2012.0602〜0708