2題(7)
一宮市博物館(妙興寺)
一宮の歴史と文化
文書がどうのとか展示のストーリーがどうのと言うより、個人的な目玉は尾西・浄観寺の観心曼荼羅! パネルで絵解きがされているので、前知識がなくても展示室でどのような画題かを確認できる。
現在確認されている観心曼荼羅は愛知県内では2点でしかも、岡崎のものは先日、焼失してしまうと言う悲劇に見舞われ、現在、愛知県内で観心曼荼羅の現存が確認できるのは浄観寺だけという状態である。
画幅全体には、縦に折り皺と思われる3本の線が走り、軸装される以前に折りたたんで運ばれたことが考えられる。横の線は軸由来のデコボコか折り皺か判然としない。
全体のタッチは頭身数の少ない「かわいい」系の人々が書かれているので、江戸時代でも極初期、あるいは戦国時代に遡る作品なのでないだろうか?
あとは『尾張名所図会』の一宮市域の名所の図会を拡大しパネル展示している。例えば、真清田神社は4ページからなり、版画ながら、当時の境内の様子をうかがうためには優れた資料。現在の真清田神社の境内からは仏教色を排除しているが、神仏習合の様子がうかがわれる。(個人的には参詣曼荼羅の発展した姿が名所図会になるのだと考えている)
地蔵寺と真清田神社の一の鳥居との関係や名所の取り合わせなど、当時の世界認識というか、位置認識と関連性の着想は思想史的な資料としても十分利用可能なのである。
と、あまり展示のストーリーと関係のない話をしつつ。
妙興寺公民館
尾張平野を語る17
まあ、後進に譲るつもりで、2日続きの1日だけの出席にしたが、自分よりも倍ぐらい生きている方がほとんどで、その遠慮はなんだったんだろう? といぶかしくなる。
『一宮市史』の刊行、一宮市博物館の開館、博物館の運営というのが一続きの活動として、最新の研究成果と市史編さんの秘話になるのか?
例えば、10年前と比べて地域の地付きの研究者が増えているわけでもなく、市井の歴史愛好家の顔ぶれが新陳代謝しているかと言えば、疑問符が残る。
市史編さんや博物館の開館をファーストインパクトと考えれば、発掘バブルがセカンドインパクトで、サードがこないまま現在に到っているのかもしれない。先頃からの「武将隊ブーム」も博物館や研究会に人々を集める吸引力には必ずしもなっていないのではないだろうか?
博物館としてサードインパクトを真剣に考えるべき時期なのかもしれない。
斎宮歴史博物館
特別展
暦と怪異 〜不安な日々の平安貴族〜
【終了しました】
展示そのものより、ストリーを明示した『図録』の方が選択したテーマはより明確になるのかもしれないというような展示。
日記類のようなガッツリした資料の読み込みと暦、軽妙な安倍晴明像と現代の復元像など硬軟おり混ぜての展示で、ライトファンにも専門家にも飽きさせない内容だったのでは?
京都・大将軍八神社から神像が3点(前期展)、伊勢の神像を後期展にすえている。
第五十二号像がお目見えなのに、対が指摘されている像ではなく、ひな形的な将軍像と童子像とコアファンには少し物足りない?
伊勢の神像群は必ずしも陰陽道とは関係がないのでは? 神宮寺の神像は、いわゆる神身離脱からくる「苦悩の神像」の系譜につらなるものなのだろう、時代も平安時代の前半に置いていいのでは?
伊奈冨神社の神像群は、個人的には、もう少し新しいように感じる。多くの神像があって、その中から限定的に残されたものの可能性を考えなくてはいけないが、現在残されている主要な5体の神像を見る限り、日吉・山王の上7社内と考えたくなる。図録の写真から上段、右から1(24p)、2(25p右)、3(25p中央)。下段、右から4(24p右)、5(24p左)とすると、大宮が3。二宮が2。十禅師が4。2と対になるのか? 5が三宮。1が客人の白山姫に当たるのではないだろうか?(中尊に3、向かって右の脇侍に2、左の脇侍が5、左奥が4、右奥に1といった感じか?)
制作年代は図録を見ると4、5に古色を感じ、1、2、3より1形式ぐらい時期差があるのかもしれないが、展示室で見た感じは、5軀1具とみて差し支えないと思われる。残り4軀の立像の随神も一体のもので山王の立体曼荼羅を形成していたのだろう。年代は山王神道の成立と伝播を考える必要があり、室町時代(鎌倉時代以前に遡るとは考えにくい)なのではないだろうか?
ああ、あと音声ガイド試してみた! 常設展のみの解説と、日記などかいつまんだ説明が欲しい特別展に音声ガイドがないのが淋しいが、初めて訪れる場合、改めてガッツリ斎宮について知りたい場合にピッタリ! 小学高学年くらいから大丈夫なのではないだろうか?
音声ガイドの端末は1ボタンで再生・停止がコントロールでき、ICタグになるのか? 解説番号の近くで端末をゆらすと番号を読みこむようなカタチになっている。
結局、音声端末の要は、特別展などに対して拡張できるかとか、掘りたての遺物に対して迅速に解説できるか? など、音声ガイドの、番号や音声内容を外注に出さずに改変が可能かの拡張性に注目が集まるようになるのではないだろうか?
せっかく館に学芸員がいるのだから、学芸員の録音された生解説で、注目の展示(絵巻物の巻き返しなどで場面ごととか)を見れたら、利用者が増える(まあ利用者が何人と言うことより、展示がどれだけユビキタスというかシームレスというか感覚的に内容が入ってくることが重要なのだろうが、、、)ような気がする。
一宮市博物館(妙興寺)
特別展
一宮の歴史と文化
2012.1013〜1118
妙興寺公民館
尾張平野を語る17
2012.1110(土) 1111(日)
斎宮歴史博物館
特別展
暦と怪異 〜不安な日々の平安貴族〜
2012.1006〜1111
*いよいよ斎宮で〈怪異〉の展示! チェキラ! !
2012年11月05日
ルオー展(6)
荻須記念美術館
ジョルジュ・ルオー展
まずは前提として作風が好きか? 年に1度の地域の美術館の特別展だから、、、で見に行くのは、少し危険かも。
作風というか、主要なモチーフをあげれば、キリストとキリスト教的世界観によるアガペー(〈愛〉)と当時の庶民の生活の象徴としてのピエロと、アガペーにより昇華される〈ピエロ〉という存在。
ルオーの生きた時代的には、ポスト印象派に後続するフォービスム(野獣派)の作家とされる。
ポスト印象派というとゴッホやゴーギャンなど、耳なじみがあるかもしれないが、フォービスムは、耳なじみないかもしれない。ようは時代の雰囲気みたいなもので、ポスト印象派が〈印象〉を色彩論的な観点から深めたのに対して、フォービスムはポスト印象派を発展させ、暴力的(野獣的)な色彩の洪水で画面を構成している。例えば青い空に補色的に赤い雲を配置するなど。(もう少し、かみ砕いて説明しないと意味不だな)
有料の図録以外に、A5判のリーフレット(入館者の人数把握の意味もあるのか?)が用意されていて、主要な作品と、作風の主題・変遷が解りやすく解説されている。
目玉は、『ミセレーレ』と呼ばれる白黒の版画による作品群。全58点の内、42点と作品の構成と主要な画題が見て取れるだけの数、展示されている。
関連して、ミセレーレの版画の上に油彩で、さかに書き込みを加えた作品など、作品に対するスタンスも垣間見える。
関連して、今回の展示品の多くを収蔵している、パナソニック汐留ミュージアムでは、
パナソニック汐留ミュージアム
パリ・ルオー財団特別企画展
I ♥ CIRCUS(アイ ラブ サーカス)
2012.1006〜1216
http://panasonic.co.jp/es/museum/
と題して、世界的なルオー作品の展示がおこなわれているので、荻須美術館を見てルオーに興味を持ったなら、汐留に行くのもいいのかもしれない。
荻須記念美術館
特別展
ジョルジュ・ルオー展
2012.1027〜1202