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2012年05月12日

4年と10年

三岸節子記念美術館
特別展
三岸黄太郎展
 三岸黄太郎は三岸好太郎と節子の長男。好太郎の回顧展という名目だが、北海道の好太郎作品、1階の常設も含めて3人展の色合いが濃い。
 黄太郎の作風は好太郎や節子からインスパイアされたモチーフの抽象画・具象画も当然なのだが、筆致の妙というか、絵の具を盛り上げたり、逆にヘラで削り落としたりして写真では感じることのできないテクスチャーを大事にしている作家だと思う。
 チラシやポスターで紹介されている「通りすぎた風景」というグレーの山に黄色い丘、曇り空の絵もチラシで見るより本物は何十倍もいい。
 個人的には2008年の「街」という第2室の作品が好み。まだ明け切らぬ街の漆黒の中に、ほんのりと浮かび上がる輪郭、その輪郭は無機質なようで、実際は指紋の残る人為的な光景。こう書くと見たくなる?
 節子の作品も1階に「さいたさいたさくらがさいた」と「自画像」2階に「ブルゴーニュの一本の木」、好太郎は2階の1室の一面だけだが初期のピエロをモチーフにした作品、作風の安定した「飛ぶ蝶」と有名な「のんびり貝」という海辺に大きな貝殻の絵が来ているので、それだけで満足できる。

一宮市博物館
火事と喧嘩は江戸の華
~火事装束
 まさにクールジャパン。江戸時代の火事というと町火消しを連想するが、火事装束は大名が、それらを指揮するための、現代の感覚からすると背広に対して作業服にあたるのか?
 現代の作業服は実用性・機能性が重んじられて、こだわるとすれば会社のオリジナルの色であったり、胸元にロゴを刺繍する位だが、江戸時代の火事衣装はホントにキレイ!
 まずロゴに対応する家紋はデザインとしてホントにキレイ。布にもこだわりがあって、フエルト地のような毛織物で、色染めも黄や赤など鮮明。
 一宮というと毛織物の産地と言うことで、博物館で墨コレクションを収蔵したそうな。それの調査・研究成果の報告と言った感じ。

一宮市三岸節子記念美術館(旧・尾西)
特別展
三岸黄太郎展
2012.0512〜0624
三岸節子
花の贈りもの
2012.0403〜0716

一宮市博物館
企画展
火事と喧嘩は江戸の華~火事装束
2012.0428〜0603

2012年05月04日

2題

皇學館大学 佐川記念 神道博物館
神社名宝展ー参り・祈り・奉るー
 神社宝物と社頭図の2部構成。
 ほんの数年前なら「参詣曼荼羅」なんて言葉は使用されず「社頭図」でひとくくりにされるのではないだろうか? とくに皇學館のような神宮のお膝元では。。。それがちゃんと参詣曼荼羅という言葉を使用して尾張一宮の「古絵図」とか「桃花祭図」と一般に言われているモノについても「真清田神社参詣曼荼羅」と新たな見解を提示している。
 1部では松尾大社の神像が展示替えを含めて3体、「住吉大社神代記」、石清水八幡宮の『類聚国史 神祇部一』(『日本書紀』神代巻に相当)、熱田神宮の『日本書紀 巻三』、神宮文庫の伊勢神道系の儀式帳など国文・国史系に注目が集まるのでは?
 2部は石清水、祇園社の社領図とか境内図に近いものから、三輪山の神体山に日月が配置される過渡的な図、多賀参詣曼荼羅の黄土を全面にする典型的な参詣曼荼羅、尾張一宮の真清田神社の廃仏毀釈運動の爪あとの痛々しい図、残闕だが注目される熱田神宮古絵図など社頭図の変遷が手堅く押さえられている。
 おしむらくは『張州雑志』から真清田神社図の古体を写真展示でいいので提示して欲しかった。
 図録は無料と有料版が用意されているので、お財布にあわせてどうぞ。常設の図録も絵葉書もオススメ。
【道程】伊勢市駅からバス、11番乗り場51系統(10分に1本程)「徴古館前」下車。左手に「神宮文庫」の額の門があるので入る。坂道を上がって車止めを右、というかベンガラ塗りの神宮文庫の反対側。大学本部まで行くと行きすぎ。

式年遷宮記念 せんぐう館(外宮)
http://www.sengukan.jp/
 今年の4月に伊勢神宮参詣の起爆剤として作られた展示施設。
 伊勢神宮の思想的基盤をイメーヂ豊かに立ちあらわしている。神宝の制作過程も、細かく展示されていて参考になる。最も注目は正殿の原寸大・復元。建築細部の説明から、丸太から材木の切り出し、角材を丸材にしていく行程、大工道具。
 ホントにビジュアル的に感覚的に伊勢神宮のことがすんなりと入ってくる感じ。
 おしむらくは図録や絵はがきなどのグッズの販売があるとなおよいのに。。。

皇學館大学 佐川記念 神道博物館
特別展
神社名宝展ー参り・祈り・奉るー
2012.0429~0526

式年遷宮記念 せんぐう館(外宮)
http://www.sengukan.jp/