難しめの新書・中公新書・岩波新書


 講談社現代新書が、ある程度、すらすら読める、内容に、少し、もの足りなさを感じるようになったら、講談社現代新書より、比較的、むつかしめの新書というのもあります。講談社現代新書より、分量も少し多いのではないでしょうか?中公新書です。

伊藤聡氏『神道とは何か−神と仏の日本史』中公新書 amzn.to/1ORMvwW

 著者は中世をフィールドに、神祇信仰(神道)と仏教の関わりを中心に研究されている方です。
 この本の特徴は、内容もさることながら、参考文献と索引(さくいん)が充実していることです。参考文献は、直接、本の中で紹介された内容だけでなく、その人の主要な研究や、この分野で、古典と目されている論文までふくめています。
 以前、博士論文の剽窃(ひょうせつ)問題の時、参考文献リストが引きうつされているのでは?という疑義が、もたれましたが、『神道とは何か』の参考文献リストは(元文献にあたるのは当然ですが)研究の取りかかりとして優れています。

 別に厚いわけではないのですが、なんとなく読みにくいというか、読むのに、ほねがおれるのが岩波新書です。昔は、岩波新書を1冊だせば、研究者としての本懐(ほんかい)、研究者としての経営も、なり立つといわれていましたが、現在では両方とも、むつかしいようです。

応地利明氏『絵地図の世界像』岩波新書 amzn.to/1TtiiqL

日本の中世には〈行基図〉とよばれる日本地図がつくられました。しかし〈行基図〉には、現在の感覚ではウソとしか思えないような地名が日本の周辺に書かれています。
 日本史や国文学ではなく地図が専門の著者が、その謎に、せまります。

藤森照信氏『日本の近代建築〈上 幕末・明治篇〉』岩波新書 amzn.to/1SV9SZq

日本の古建築については太田博太郎が有名で、いくつかの専門書があります。
 しかし太田博太郎が手をつけなかったのが、文明開化以後の近代建築とよばれる、西洋の建築技術を学んで、日本の建築技術と融合したような建物です。コロニアル(植民地の)建築、イギリス式、ドイツ式など、ちょっとした見方の基本が身につくと、街歩きが楽しくなります。

 岩波新書の最大の特徴はアーカイブの多さです。新刊は手に入らなくても廉価に古書を手に入れることができるのも特徴です。

小林行雄『古墳の話』岩波新書 amzn.to/1SVakHb

いわゆる「三角縁神獣鏡は卑弥呼の鏡」の基本文献です。内容はいまだ色あせてません。

 岩波新書は、赤版、青版、黄版、新赤版など、表紙の色でよばれることもあり、表紙を見れば、いつごろ書かれたものかが分かります。また、古書でプレミアがついてしまっている場合でも、岩波書店にはリクエスト復刊という制度があり、黄版、青版の新書の新刊 が発売されることもあります。
 まあ、中公新書、岩波新書が難なく読めるようになれば、あらかたの新書が読めるようになるでしょう。いま、ホントに新書コーナーが残念なので、どの出版社が新書をだしているかの一覧表が、必要なのかもしれませんが、今は、さまざまな新書をあげるだけに、とどめておきます。

             
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