東大寺法華堂

2009/08/28 (Fri) 11:24:15
 ここまでは、寺院の堂内の仏像群について須弥山世界をキーワードに見てきた。
 日本の仏堂での祭儀や芸能を議論する上で、もう一つ重要になってくる空間が後戸(うしろど)である。
 後戸とは、中央本尊の背後の空間を意味する。その場所に、秘仏を配したり、特殊な神をまつることがある。後戸について、重要性や詳しいところは服部幸雄『宿神論』岩波書店を参照されたい。
 仏像鑑賞上、有名な事例として東大寺の三月堂(別名、法華堂)の例があげられよう。東大寺・三月堂は「お水取り」で有名な二月堂の南に位置する。本尊は不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん)である。堂内の仏像群については他所からの移入も指摘されており、ここでは詳しくしない。(仏像通には三月堂の仏像群は東大寺・戒壇院と並び有名)
 本尊の裏に厨子(ずし)があり不空羂索観音と背中をあわせるように、執金剛神(しゅこんごうしん)をまつる。普段は秘仏で現在は日時を決めて公開されている。
 執金剛神は金剛杵(こんごうしょ)とよばれる仏教法具を神格化した仏像(天)で、執金剛神が発展すると金剛力士(仁王)になるとされる。
 後戸の祭神については、中央本尊と関わり合いがあることが指摘されている。須弥山世界の仏像群が本尊の荘厳であるのに対して、後戸の祭神は本尊のチカラの文字通りの裏側を意味している。不空羂索観音が比較的、穏和な顔をしているのに対して(あの顔が穏和かどうかは異論もあろうが、、、)執金剛神が忿怒の出で立ちなのは、相反なモノをワンセットと見るような考えが、はたらいていると思う。
 なお、後戸について必要以上に神聖な空間と見ることには熟考を要するとの意見もある。

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