第六天魔王
第五 日本国の事
二神ともに夫婦になり1女3男をお産みになり、国のあるじになさろうとすると、
第六天の魔王が、この国を打ち破ろうとしたので、
太神は魔王の心をなだめかね、おん妹の渡津神のひめという形よくいらっしゃるのを魔王にあたえて、
「国が定まったといっても、全く仏法を流布させない」として心をおとりになった時、
日本国を天照太神に奉りになった。
譲状を神爾という。今の内裏の重宝である。
『古今和歌集灌頂口伝』『中世古今集注釈書解題 第五巻』
田中貴子氏 『外法と愛法の中世』 平凡社ライブラリー p66
二神はイザナギ・イザナミであろう。
1女3男は天照太神、ヒルコ、スサノウ、月読であろうか。二神は太神を主にしようとする。
そこへ第六天の魔王の登場。この国を打破しにやってくる。
天照太神は魔王の心をなだめかね、容姿端麗な妹の「渡津神のひめ」を魔王にあたえ、
太神は「日本国が定まったとしても仏法を流布させない」と誓いをたてる。
かくして、魔王は日本国を天照太神にゆずった。
譲状を神爾といい、今の内裏の重宝である。
内裏の神事の縁起譚である。
田中氏は「渡津神のひめ」を龍女に通じるものと考えている。
天照太神を蛇(龍)として感得する例として「津市・観音寺大宝院縁起」が思い出される。