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龍王3題

『源平盛衰記』には、

その大蛇は、宝剣は「日本帝の宝に非ず。龍宮城の重宝也」と宣言し、素盞烏命(すさのおのみこと)に奪われた剣を奪い返すために、出雲国簸川上(ひのかわかみ)八岐(やまた)大蛇(おろち)が安徳天皇と生まれ変わって、源平の乱を起こし、その結果龍宮に返し取ったのだと告げたという   

『変成譜』p234
 と、あるという。八岐大蛇(龍)の尾から発見された宝剣が龍宮へ帰ったのだとする〈中世日本紀〉的な話題。
 龍宮については、以下のような話もあるようだ。

悪魔・外道が跳梁する世、阿耨達(あのくだつ)龍王が聖教類を手にしたまま海中深く潜ってしまったために、仏法はついに「滅尽」したという。

『摩訶摩耶経』『変成譜』p236
 龍宮に経典が運ばれることによって、仏法の滅亡が語られる。
 龍宮と経典と言うことから、

こうして『保元物語』の一本は、血染めの大乗経は崇徳院の手によって海中に沈められたと伝えるが、事実は、院の遺児・元性法印の元にひそかに蔵されていた。

『変成譜』p237
 怨霊として名高い崇徳院の経典が海中(龍宮)に運ばれたとする物語。
 上のような、思想的背景が影響を及ぼしているのだろう。