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『渓嵐拾葉集』の種別

真如蔵本A・Bを初めとする大部な伝本のすべてが、近世になってから成立したということである。その理由として考えられるのは、近世になってから、各地の寺院に蔵されていた『渓嵐拾葉集』の転写本を収集し、「原型」を復元とようとした運動があったのではないか、ということである。本書ではそれらの大部な本を「近世編纂本」とかりに呼ぶことにする。
『『渓嵐拾葉集』の世界』p52
ここでは便宜上「転写本」と呼んでいるが、それはあくまで現代における形態でであって、成立状況は通常にいう転写本とは異なる。中世に『渓嵐拾葉集』が全巻揃った形態で流布した形跡はないので、全巻から次々と欠落していった残りという意味ではなく、個々が完結した一つの本として流布したものの謂である。
『『渓嵐拾葉集』の世界』p53

『渓嵐拾葉集』には、おおまかに「近世編纂本」と「転写本」があるという。