カキツバタ
昔、男がうらぶれて都を離れ、遠く東国に下った時の話。
男はひとりのうら若き女と出会う。
もともと、男は色好みで、一目で女に恋をし、女に一夜の宿を頼む。
女も断ることができず、一夜をともにする。
明くる日、この出会いの名残りとして、女が舞を舞う。
女が舞終わるのと時を同じくして女はかき消えてしまう。
後に残された男の前には、一面のカキツバタと、曲がりくねった橋だけが残った。
女はカキツバタの精霊で、女も男に恋をし、道ならぬ恋に胸をこがし、精一杯の舞を舞ったのだろう。