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3題

大阪府立狭山池博物館
新発見、安松田遺跡の東大寺瓦
 展示ケース1台だけの小さな展示だが、その意義は非常に大きい。
 いぶし工程の非常に希薄な酸化系の白色を呈する表明を持つ瓦。解説などでも他の東大寺瓦窯に先行するのではないかとされる。
 管見を差し挟めば、渥美窯の様式編年は東大寺瓦の年代を再建東大寺の開眼の年代を元に実年代を当てはめていたのが、これまでの研究の成果ではないだろうか?
 しかし、皿焼窯の五輪塔が重源ゆかりのものと考えられ、これまでの年代観と若干の狂いが生じていると思うのは筆者だけだろうか?
 まあ、伊賀別所・新大仏寺の木製五輪塔も含めて、その異形ぶりというのは五輪塔の研究者からも疑義が発せられていることもあり、今後の詳細な検討(あるいは四日市市立博物館・奈良国立博物館の研究)をふまえて十分議論されなければならないが、現在の私見を述べておく。
 まあ、後出しじゃんけんのきらいもあるが、伊良湖東大寺瓦窯の瓦について再建大仏の開眼供養の以後、あるいは大勧進が栄西に替わってからの瓦のような気もする。つまり、再建大仏殿は開眼の段階で非瓦葺き、あるいは今回の成果に頼れば安松田遺跡と、その周辺の瓦を限定的に使ったのではないか?
 1つの論拠としては『南無阿弥陀仏作善集』に伊良湖に対する記述が存在しないことがあるのだが、伊良湖での重源の窯業に対する殖産性を考える内に、ギブ・アンド・テイクのテイクのある場合には〈作善〉と考えなかったのかもしれないとも考えられ、もう少し熟考したい。
 その中で、安松田遺跡と伊良湖東大寺瓦窯の瓦の違いを考えた場合、窯内に炭素原子を充満させ瓦の表面に黒色を吸着させる「いぶし技法」の開発というのは1つ着目していい技法上の違いなのかもしれない。

飛鳥資料館(奈良文化財研究所)
春期特別展
星々と日月の考古学
 今年はキトラのはぎ取りの展示がないので落ち着いた人出。
 しかし、現物を実見するのも大事だが、毎年、地下で行われるモチーフをテーマに調べ上げられた展示は図録も含め、見ておく価値のある展示。
 今年は、天体図をテーマに東洋における天文学の発達と思想を概観できる。

大和文華館(奈良・学園南)
開館50周年記念 特別展I
女性像の系譜
-松浦屏風から歌麿まで-
 改修が終わり門前の駐車場が整備され、展示施設までの道のりも石畳に改められた。
 駐車場は申し分ないが、石畳は改修から日も浅いこともあり落ち着きが少なく感じられるが、数年とか十数年というオーダーでじっくりとしっくりしていくものだろう。
 松浦屏風の展示にあわせ、ひろく美人画を集めた展示。
 展示室に、ぎっしりと美人画が集められているのは壮観。目新しいものも多く、入門者のみならずクロウトの鑑賞にも十分堪えうる展示なのではないだろうか?

大阪府立狭山池博物館
スポット展示
新発見、安松田遺跡の東大寺瓦
2011.0426~0508

飛鳥資料館(奈良文化財研究所)
春期特別展
星々と日月の考古学
2011.0416~0529

大和文華館(奈良・学園南)
開館50周年記念 特別展I
女性像の系譜
-松浦屏風から歌麿まで-
2011.0403~0508