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近代美術館2題(3)

京都国立近代美術館
高橋由一展
 高橋由一というとピンと来ない人もいるのかもしれないが、美術の教科書の鮭の絵の人というと、大体の人が知っているのではないだろうか?
 幕末〜近代の洋画家というか、美術史的な立ち位置を説明しようとすると、いささか難しい。(音声ガイドが、解りやすく詳しい説明がされている。あと入り口の人物相関関係、由一自身にも政治的、経済的に野心的な活動をしていたこともあるのか、当時の各界の名士がポンポンと出てくる)
 近代の画家の回顧展というと美術史的な関心のある人が見るべきものと考える向きもあるかもしれないが、『美の巨人たち』で多くの作品が紹介されているし、キャプションや音声ガイドで十分説明されているので予備知識なしで、ふいっと入っても十分楽しめるのではないだろうか?
 まあ、説明以上に、作品そのものが、由一の実験と着眼性によって完成されているのが、すばらしい。
 絵はがきになっていない(?完売したのか?)ので、それほど人気ではないかもしれないが、個人的には「不忍池」が好き。(あれもこれもあげて説明しても展示の説明にならないので割愛)
 グッズが充実しているので、それもライトファンには嬉しいところ。由一が苦心して2Dに落とした鮭を、わざわざ3Dにしてるの。
 4階の常設展に田村宗立の回顧展、中央の前半1室だけの、こぢんまりしたものだが、由一とも関連して楽しめる。あと片岡球子の「面構シリーズ」が2点。稲垣仲静の「太夫」は明らかに由一に対するオマージュだよね。芹沢銈介の「法然上人御影」が個人的には好き。絵はがきにして飾っておきたい感じ。
「太夫」と「法然上人御影」の絵はがきが1階のショップにないのは残念のかぎり。

滋賀県立近代美術館
石山寺縁起絵巻の全貌
~重要文化財七巻一挙大公開~
 全巻展示の前期展は終了して、これからは前半部分、後半部分の巻き替えがおこなわれる。江戸時代の写本を、この期間に交互に展示。
 後期の全巻展示は11月13日から。
『源氏物語』とか紫式部の話になるとマスメディアで取り上げられて、一部研究者から「また?」的な疑義があげられるので有名な?(って展示のレコメンドになってるのか?)石山寺縁起。
『石山寺縁起絵巻』は全7巻の絵巻だが、1〜3巻がまとめてつくられた以外は、各巻が5巻、4巻、6〜7巻と順番につくられている。かといって時代時代に詞書きが創作されたかと言えば、1〜3巻の時期に詞書きが先に、まとめられて、その詞書き(詞書きの清書は時代時代につくられている)によって筋書きがなされている。
 絵巻物なので、比較的読みやすい、くずし字で書かれていて、キャプションに(読みやすいように現代的な、かな交じり文に直されているが)翻刻がなされている。
 つかれない程度に、つまみながら読んでいくと、読み進めていくウチに、だんだん目が慣れてくるのが解る。
 某インターネットサイトで、くずし字の巻物の展示風景を撮影していたのがだ、絵の部分をゆっくり撮影して、詞書きの所を、すっ飛ばして、次の絵の所に飛ぶのは閉口した。たとえ建前としても、詞書きが展示されていれば、詞書きを読むべきで、それは展覧会に割ける時間と体力、能力に応じて、ある程度を読んだり、読み飛ばしたりするのを否定しないが、あくまで、建前は読むべきものということを、ちゃんと示していかないとな。
 あと半月くらい先に『正倉院展』が始まるが、正倉院展の観覧者は、非常に、そのことを心得ていて、経典や行政文書のような、必ずしも読みやすくない古文書にも長蛇の列をなして天平時代の筆致や、時に光明皇后の真筆のようなものを、ありがたがって鑑賞している。
 いずれ、「古文書解読QS」もやりたいんだけどね。いかんせん自分が読めないから、なかなかすすまない(T_T)
 あと、石山寺一切経から悉曇(梵字)関係の資料が何点か来てた。美術の展示でも、とりあえず石山寺一切経からと言うのは琵琶湖文化館クオリティーなので、ちゃんとDNAが滋賀県立近代美術館(近代美術館なんだけどね。モダンアートについてもヒットやホームランを打てる美術館)にも流れているんだと嬉しくなる。
 仏像が3点、出ていたが個人的には、もう少し古ものなのかな? とも思う。胎内の如来像が新羅製、観音が飛鳥時代(ほぼ7世紀第2四半)、頭部の欠けたトルソーが7世紀の中頃なのかな?(たぶん、こんなに古く見るのは僕だけなんだろうけど・・・)

京都国立近代美術館
読売新聞大阪発刊100周年記念
高橋由一展
2012.0907〜1021
http://yuichi2012.jp/
http://www.nhk-p.co.jp/tenran/20111116_155017.html

滋賀県立近代美術館
石山寺縁起絵巻の全貌
~重要文化財七巻一挙大公開~
2012.1006〜1125