即位灌頂の発生
阿部 ひじょうに現象的に、大嘗祭が天皇即位の儀礼としてなかなか運営できなくなったから、逆に仏教がいろいろな即位儀礼をつくり出して、それに代わるものとしてやったという。ひじょうに単純な解釈をされる。それはちょうど鎌倉末期から南北朝前後に王権の維持がおぼつかなくなってきたときに、こういう即位儀礼に関することがいろいろ記録に出てくるから、それはやはり対応した現象なんだということなのですが、さっき申しましたように、即位灌頂はもっとさかのぼるわけで、けっしてそういうふうに単純に対応するものではない。(略)結論はそこまで単純にいわないほうがいいだろうと思っているんです。
「即位法の儀礼と縁起」p36
即位灌頂の成立。その時期が大嘗祭のような律令制下での王権儀礼の衰退とオーバーラップする時期にあるのは確かなことなのだろう。
しかし、即位灌頂の成立の原因をそのことに求めるのは早急にすぎる。
仏法の側、律令制下で王権儀礼にたずさわっていったもの。そして王自身のアイデンティティーみたいな。