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悪党の風貌

そのころの悪党というのはまことに異類異形(いるいいぎょう)、とても人間ともおもわれぬ姿でした。柿帷(かきかたびら)(柿色の単衣(ひとえ))に六方笠(ろっぽうがさ)(女の日傘)をつけ、烏帽子(えぼし)(はかま)をつけず、人に顔をみせないようにこそこそ忍び歩き、矢の数も不揃いな竹矢籠(たかしこ)(竹の筒に矢を入れて背に負う道具)を負い、(つか)(さや)も剝げた大刀をつけ、竹長柄(たけながえ)(竹の長い柄をつけた武具)や撮棒(さいぼう)(堅い木の先の尖った棒)の杖をもつだけで、(よろい)腹巻(はらまき)などのようなまともな兵具はとてももちあわせていないという奇妙な姿でした。

『峰相記』『王法と仏法』p164