2題
京都国立博物館
法然-生涯と美術-
親鸞の展覧会は多く存在するが、法然展は貴重。この展覧会というか、御年忌に併せて、多くの法然本、番組、企画が連動している。と言いつつ、ちょっとガッツリ法然を学びたいと思ったら『法然の哀しみ』をオススメしたい。
当たり前と言えば当たり前のチョイスなのだが、法然を伝記、著作、周辺の人々から立体的に立ち顕している。梅原日本学というと膨大な資料を駆使した大胆な作業仮説という印象が強いかもしれないが、『法然の哀しみ』においては、法然の発心としての〈哀しみ〉に着目する以外は非常に慎重に膨大な資料を操作されている。梅原日本学のターニングポイントにもなっている作品だと思う。
話がだだそれなのだが。
『法然上人絵伝』を手がかりに法然の生涯を映し出し年齢に応じたカタチでトピックスを立てている。
顕密的に言うと〈生身の仏〉になるのだろうが、阿弥陀如来像の胎内に、さまざまな納入品を収める造仏の方法の多くの作品が取り上げられていた。阿弥陀との結縁という意味合いになるのか? 1点目の注目はココ。
もう1点は「七箇条制誡」だろう。期間限定なので公式で展示期間を要確認なのだが、法然と親鸞(綽空?)をつなぐ貴重な資料を全文見れるのは貴重。(と、やや真宗よりなのだが)
明治以降の研究史を考えると浄土宗は浄土宗、浄土真宗は浄土真宗と宗派ごとの研究が多くを占めている。もっと立体的に「一枚起請文」は浄土真宗にとっても重要な心構えだし、逆に『御文・御文章』は浄土宗にも貴重なのでは?
いわば、三河の真宗教団のように法然も親鸞も大事という姿勢は、今後、注目されるスタンスなのではないだろうか?
あ! そうそう、図録、買ったら、岡本太郎のポスター附いてた。なんか、ラッキー!
京都市美術館
親鸞展 生涯とゆかりの名宝
親鸞展は、数多くあれど、どうしても三河や三重でやると三河と専修寺の資料ばかりになり、京都でやるとお西かお東のものばかりになるのを、非常にバランスよく貴重な資料、展開として重要なものを要点よくまとめてある。
http://www.shinranten.jp/
こっちの親鸞展がビジュアル的・感覚的に親鸞の生涯を展示しているのに対して、京都市美の展示は一級資料を駆使して生涯を提示している。
とくに注目すべき1点をあげれば『小経』『観経』の親鸞自筆注釈。あの細やかな書き込みの跡は一方で選択とか専修と呼ばれる浄土教系の諸宗にも、ちゃとした教義的研鑽が必要である事を示してくれる。
京都国立博物館
特別展覧会
法然上人800回忌
法然-生涯と美術-
20110326~0508
京都市美術館
親鸞展
20110317~0529
『法然展』 監修:京都国立博物館 企画・制作:NHK/NHKプロモーション/京都新聞社/アートアンドパート 音声ガイド作品リスト附 解説件数:18件 解説時間:約30分 ナレーション:竹下景子氏
*解説件数が少ない事で聞く側に余裕がある。
*展示のストーリーと作品の意味が聞くだけで理解できるという音声ガイドとしては当たり前の事だが、その点で練られていて、音声ガイドを借りる事により展覧会が十二分に楽しめる。
『親鸞展』 ガイド作成・音響演出:A&Dオーディオガイド 音声ガイド作品リスト附 所要時間:約30分 スペシャルゲスト・ナビゲーター:三國連太郎氏 作品解説ナレーター:藤村紀子氏
*なんか音声ガイドがパッカーン! となった感じ。
*作品1点1点に対する解説は基本的な事柄を汎用的に応用可能な内容にとどめて、展示のストーリーの提示に多くの時間を割いている。
*これまでの図録やキャプションの音声化とは一線を画するのではないか?
*まあ、こういうストーリー重視の音声ガイドには向き不向きがあるから、逆に作品のイコノロジーを駆使する音声ガイドも可能なわけで今後に期待できる内容。
*法然展同様に音声ガイドを借りると展覧会が十二分に楽しめる。